2010-01-01から1年間の記事一覧

二番煎じ(その2)

2の組を送り出すと、世話役は番小屋の戸締りを命じ、徐に月番に娘が持たしてくれたという瓢箪に入れた酒を回し飲みしようと提案。 ところが、頭の固い月番は「お役人に見つかったらどうなる!あなたは諌める立場にある先生役でしょう」と固辞し瓢箪を没収、…

二番煎じ(その1)

《このところ落語という古い題材を専ら取り扱っていますが、新しいお笑いという点では、12月26日(日)に放映された『M-1グランプリ』は見応えがありました。参加漫才師4835組の頂点に立ったのが「ダブルボケ」の『笑い飯』。正確に言うボケとツッコミがコン…

崇徳院(その2)

熊さんが、「瀬をはやみ〜」の書きつけ以外手がかりのない先方のお嬢さんを見つける手立てがないと言いかけた際の、親旦那の命令が強烈です。 ■「分からん」といぅたかて日本人やろ? ▲そら、日本人でんがな ■日本人なら、これから行って大阪中探しなはれ。…

崇徳院(その1)

このところ、落語鑑賞ブログになりつつありますが、マーにとっては、落語をきっかけにあれこれつまらないことを綴るのが一番気楽みたいです。 今しばらくお気楽独り言にお付き合いくだされば幸いです。 この噺は上方発祥のようです。高津神社へのお参りがき…

小言幸兵衛&搗屋幸兵衛(その2)

出しかけたお茶、羊羹も引っ込めて、「せっかくだが貸せない」 理由は「長屋で心中が起こってはたまらない」 幸兵衛「…考えてごらんなさい。歳はァ20歳でしょ?ねえ?でェ、職人として腕がよくて、男っぷりがいいン、ねえ?ひとりもんなんだ。こんな物騒な…

小言幸兵衛&搗屋(つきや)幸兵衛(その1)

上方落語ではあまり聞かないので関東の噺みたいです。 文句ばっかり言っていて、その癖特段の悪気や後腐れがない長屋の大家さんの、相手を選ばぬお小言そのものや想像力の突飛さが可笑しい。 こういう人は、ブツブツ文句を言う瞬間にストレス発散していそう…

胴乱の幸助(その3)

こんな風に街中のたわいもない喧嘩を治めるだけならよかったのですが、この親っさんにも「見事あの騒動を治めた」ヒーローと言われてみたい虚栄心があります。芸事のイロハも知らない仕事一筋だった親父がよりにもよって浄瑠璃の稽古場でちょうどやっていた…

胴乱の幸助(その2)

悪い連中がいるもので、お金の持ち合わせがない時に小料理屋で一献傾けたいときに喧嘩のふりをして、そこを通りかかった件の親父に間に入ってもらい、タダ酒に預かろうという輩が登場します。ただ酒目当てで喧嘩を始めた2人の間に入った親っさんは、このけ…

胴乱の幸助(その1)

個人間、あるいは組織や国家の間でも仲違いや諍いの話はよくありますね。 何とか穏便に円満に仲良くできないものでしょうか。 個性と個性とのぶつかりは他者の無視、嫌悪あるいは排斥を伴わざるを得ないのでしょうか。 とても難しい課題ですが、親和の可能性…

寄合酒(その2)

かくして、銘々不適切な(?)手段で酒や肴を調達し、これから料理。ところがこれが思いがけぬ展開に。 まず、ご馳走を横取りされた赤犬の逆襲。Aがこれからの宴会を取り仕切る親父。Bが頼りない調理人。 A「言ぅこと聞かなんだら(赤犬を)バ〜ンとくら…

寄合酒(その1)

肴や酒を銘々が持ち寄って飲み会をするという噺で、例のリンクフリーとのことで重宝しているライブ記録http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/index1.htm でも、人気ランキングの89位(475作中)に顔を出しています。この噺には落語のお惚け(枝…

鹿政談(その2)

江戸時代、奈良の鹿はご神鹿(しんろく)とされ、誤って殺しても死刑だったとか。 割り木が当たって息絶えた犬と思い込んでいた動物はこともあろうに鹿! 正直者の豆腐屋は、即刻お白州へ。当時奈良の町奉行は情のある裁断が評判で、その後江戸北町奉行に栄…

鹿政談(その1)

平城遷都1300年祭で湧く奈良(当地在住の友人によると盛り上がりを欠くそうですが)でまず連想するものといえば、大仏、鹿あたりでしょうか。 いきなり脱線しますが、下の写真集はなかなかおもしろかったです。素人っぽい構図の写真にかえって親近感を覚…

お経との付き合い

《このところ、まとまった仕事があってブログを書く心のゆとりがありませんでした。 似たような仕事のピークは6月にもあり、その際の経験が生かせそうなものなのに、学習効果なし。 むしろその時より雑用が増えてしまって手間がかかっています。 「戦略的手…

他人と比較しても仕方ない(その2)

不幸を招きやすい比較の代表格は、外見や数字で勝ち負けが目に見え、負けた方がネガティヴな感情を抱く類のものです。 これは価値観や思考の硬さと関連することが多い。 たとえば、「試験は高得点の方が立派」(多くはそのとおりですが、入学試験などは最低点…

他人と比較しても仕方ない(その1)

「まずもって人間を不幸たらしめているのは『他人と比べる』という比較の概念ではないでしょうか。不安、自己嫌悪、屈辱感、嫉妬、怒り・・・自分を傷つける感情はほとんど『比較する』ことから生れているからです」(樋野興夫『がん哲学外来の話』) 確かに…

軒づけ(その2)

《音程が怪しい素人集団だけに、軒づけには三味線が不可欠。ところがいつものメンバーが用事で、急遽代役に指名されたのが、紙屑屋のテンさん》 「え? 紙屑屋のテンさんいぅたら『クズ溜ぁ〜って〜ん』言ぅて、チギ持ってカゴ持って来るあの? あらまぁ〜、…

軒づけ(その1)

「のきづけ」という風習自体、文化財ですが、かつて浄瑠璃が庶民の身近な娯楽だった頃、きちんとした会場で演ずる腕になるまで、数人で各家の軒先を回り、浄瑠璃の素人流しをやっていたことがあったそうです。 「流し」という言葉もタクシーくらいしか馴染み…

再び血液型性格診断について(その2)

その方はどうやら既婚の30歳台女性のようでした。漏れ聞こえてきた話は概ね次のようなもの。 「私はAB型で二面性があって、人付き合いが苦手。自分をストレートにうまく表現できない。第一、中途半端な性格が我ながら嫌でたまらない」 「B型だったらよ…

再び血液型性格診断について(その1)

このところ仕事のせいで筆(キーボード?)が滞りがちです。 遠距離通勤(片道2時間弱)のためか、くたびれて頭の中の(いい加減な)発想が文字になる前に寝入ってしまうこともしばしば。 肩凝りをはじめ、からだにもガタが来ているようで、休みの日は近く…

ある展覧会の感想(その2)

仙がい和尚はエピソードに事欠かなかったそうです。たとえば次のようなのがあります。 ある外出からの帰り、ぬかるんだ道の真ん中で下駄の鼻緒を切らして立ち往生していたところ、近くの豆腐屋の女将さんが親切にも駆けつけて鼻緒をすげかえてあげた。 その翌…

ある展覧会の感想(その1)

《阪神タイガースCSシリーズ敗退。日曜日(甲子園球場満員御礼)は、6回終了まで6−2だったのに終わってみると6−7。いかにも阪神らしい試合。 放蕩息子を勘当できない親、悪友と縁が切れない男や女に似た気分の(真の)阪神ファン。やはり来年も多くを…

久しぶりに日本酒について

先週末、三軒茶屋界隈についでがあり、確か美味しいおでんやさんがあったなと記憶を手がかりに行ってみると、なくなっていました(ショック!)。 結構繁盛していたはずなのですけれど、競争が熾烈なためでしょうか。 店構えは、そのおでんやさんのまま割烹…

戦略的手抜きのすすめ

ご案内のように、マーは、いわゆる「企業戦士」からは縁遠いタイプです。 仕事のスケジュールで一杯になった手帳を誇らしげに見せてくれる人がよくいますが、自分の手帳が仮にそんな風だったら憂鬱な日々を過ごすことになりそうです(過去を振り返ってもそう…

『堪忍袋』と赦しについて

前回取り上げた『堪忍袋』のように「怒りを甕や袋の中に吐き出して、スカッとしたらあとは笑っている」というタイプの人は案外少ないかもしれません。 やや屈折した形ながら、ストレス源の相手を咎めないのは「許す(赦す)」ことに近く、そんな広い心の人は…

堪忍袋(その2)

大きな甕を置く場所もない狭い長屋故、大家さんは、堪忍袋を作って代りに使うことを勧めます。 案外律義なこの夫婦、言われたとおり、喧嘩文句は堪忍袋に思いっきりぶちまけて、そのあと「ひゃはは」、「ひっひっひっ」と作り笑い。 腹に溜まっていたモヤモ…

堪忍袋(その1)

『厩火事』、『口合小町』同様、喧嘩の絶えない夫婦が登場。 喧嘩の仲裁に入った大家さん、次のような中国の故事を引いて、笑い合ったところを見たことがないこの夫婦を諭します。 「(あなたたち夫婦と大違いで)人前でいつもにこやかな笑みをたたえた人が…

狸の賽

鶴の恩返しならぬ狸の恩返しの噺。 ただ、こちらはサイコロ賭博の手伝いで、いわゆる「公序良俗」には反しますが… 浦島太郎に出てくる亀のように、子供たちに苛められていたところを助けてくれた男に恩返しするため、男の家に、まだ幼いその狸がやってきます…

翻訳(翻案)のすすめ(その3)

≪あちろうさん、「吉兆味ばなし」のご紹介ありがとうございます。ぜひ読んでみようと思います。 「味が若干からそう」とのことですが、マーが料理をする際の基本は「あまり味をつけない」ことです。 多くのレシピどおり先にしっかり濃い(辛い)味付けをして…

翻訳(翻案)のすすめ(その2)

研究でも実務でも、その分野で使われている主要な考え方の源がほとんど輸入物ということは少なくありません。 分野によっては、その輸入品そのものやトリセツを一言一句違わず再現することが最重要ということもあるでしょう。 でも、一部の専門家や研究者を…