翻訳(翻案)のすすめ(その2)

研究でも実務でも、その分野で使われている主要な考え方の源がほとんど輸入物ということは少なくありません。
分野によっては、その輸入品そのものやトリセツを一言一句違わず再現することが最重要ということもあるでしょう。
でも、一部の専門家や研究者を除けば、輸入品は一つの参考としてとらえれば十分なことの方がずっと多いのではないでしょうか。
日本の場合にうまく当てはまるものばかりではないはずですし。


輸入物に限らず、どこかで見聞したことを得々と紹介して悦に入っている人が結構います。
有名人・伝説の偉人の話の受け売りだけでは、大概目の前の問題の解決には役に立ちません。
時代や状況設定がピッタリ同じにはまずならないことが主な理由です。
それらのありがたいお話や学説を自分流に噛み砕いて応用する「構想力」の類が、大多数の人にはむしろ大切と思います。
また、「本当に役に立てることができるのは、自分が理解・納得できた部分のみ」だと考えます。


同じ図形を見たり、物語を読んだりした後、「どんな図形(物語)だったか」と尋ねてみると人それぞれだったり、伝言ゲームをしたら最初と最後で似ても似つかない内容に化けてしまうことがありますよね。
知識の受け売りは誤解を増幅しやすい。
それよりは、現時点で自分に理解できたことの範囲を確かめ(全部わからなくても、まぁえーやん!)、その中のいくつかについて独自の言葉で整理し直す方があとあと力になると信じます。
自分で編み出した解釈や言葉なら簡単に忘れないし、もとの他人のアイデアの殻を破るきっかけになるかもしれません。


一人一人にはものごとを認識する際の枠組み(スキーマschema)があって、それらは個人差が大きい(これが各人のクセや個性に反映されます)といわれています。
権威あるご高説を、たとえ少々レベルが下がっても自分流に翻案する習慣を心がければ、応用できる場面はぐっと増え、使ってみるとさらに自説を発展させるヒントが得られるかも。
料理は、レシピに寸分違わず従うよりは、むしろ自分の好きなように味付けして美味しく食べればよいと思うのです。