二番煎じ(その1)

《このところ落語という古い題材を専ら取り扱っていますが、新しいお笑いという点では、12月26日(日)に放映された『M-1グランプリ』は見応えがありました。参加漫才師4835組の頂点に立ったのが「ダブルボケ」の『笑い飯』。正確に言うボケとツッコミがコンビの間で入れ替わるのですが、さらに今回決勝初進出の『スリムクラブ』はボケに対するツッコミが一風変わっていて受容や諭しの類(TVでは(静かな)「説得」と称していました。)で新鮮でした。ボケと説得の漫才は、コンビが互いの顔を見つめ合い絶妙の間を取りながら語りあっていくという、最近の漫才の主流とは打って変わった、ゆったりしたリズムとテンポで展開されましたが、得も言われぬ可笑しみを醸し出していました。やはり笑いの仕掛けは絶えず進化し得るものだと思います。》


ところで、この噺は時期的に、記録的な寒波到来の今がピッタリです。
志ん朝のCDを何回か聴いていますが、名人芸の雰囲気が漂います。
江戸名物といわれる火事に備えて「火の用心」を町内から一軒一人ずつ出して自警団を組織し、防災活動の確認に役人が一人ずつ付いていた頃の話。
自警団の世話役のある商家の旦那が見廻り班を2組に分けて、片方が見廻りをしている間は他方は番小屋で休むという、疲労予防の名案を出して了承されます。


言い出しっぺとして提案した旦那の班は先発隊で見廻り。
鳴り物の鳴子、拍子木、金棒、寒さのあまり、みんな懐や袂の中に手を入れているため、それらしい音が出ません。
それならと『火の用心、火の廻り』だけでもしっかり発声してもらおうと指名すると、「火の用心はいかがですな」と売り子口調になったり、謡や清元の妙な抑揚がついたりして散々。
唯一、吉原の鳶頭(かしら)の世話になっていたときに火の廻りをやったことがある辰つァんだけが朗々とそれらしい喉を披露してくれます(これは文字では表現不能、ライブか録音に委ねます。)が、調子に乗って声が北
風に震える音「ホゥホゥホゥホゥ」を余分に付けたりして恰好がつきません。


そうこうしているうちに番小屋にこの一の組が帰還するのですが、むしろここからが噺の本題になります。