あまりない経験

3月11日の大地震の際、通院帰りの電車に乗っていました。
急停車し、激しい縦横の揺れ―あれほど大きいのは初めての体験でした―で、車両ごと横転するかと心配しました。
それから一時間半ほど車両に閉じ込められました。


乗客は情報を求めてめいめいが携帯電話を取り出します。
ワンセグのテレビを観ていた人が『震度7?』という信じられない数字を口にしたのが漏れ聞こえました。
乗っていた電車の場所の震度はあとで確かめると5くらいでしたが、それにしても大変なことが起きているのは、さすがのぼんやりすとでも察することができました。


感心したのは閉じ込められた時間に奇声をあげたり、怒り出す人がいなかったことです。
あんな長い時間をみんなが不安な中、じっと待っていたのです。
車掌さんも車内アナウンスだけでなく何回か車内回りをしてくれたのも、乗客の平静心を保つのに役立ったかもしれません。


そして、最後の車内アナウンスが「これから最寄り駅まで歩いていただきます」―えっ、どれほど距離があるんだと心配しましたが500mほどとのこと。
車両から一人一人梯子を使って線路わきに降ります。
電車の床は案外高いところにあるのですね。
結構長い梯子でした。
着物の女性やよちよち歩きに近いお年寄りもいて、みんなに歩けと言われても容易ではありませんが仕方なし。


ようやく最寄駅のホームにたどり着いたときに線路から見上げてわかりましたが、駅のホームは思いのほか高いところにあるのですねた。
線路を歩くのはめったに経験できませんが、やってみると案外大変でした。
その中で乗客の冷静さは予想外で大したものだと改めて感じました。