堪忍袋(その1)

厩火事』、『口合小町』同様、喧嘩の絶えない夫婦が登場。
喧嘩の仲裁に入った大家さん、次のような中国の故事を引いて、笑い合ったところを見たことがないこの夫婦を諭します。


「(あなたたち夫婦と大違いで)人前でいつもにこやかな笑みをたたえた人がいた。
怒ったことがないこの人を一度怒らせてみたいと友人たちが宴席に招き言葉の限りを尽くして挑発。
ところがやはりいつものように、にこにこしている。
急用のため中座して帰宅したその笑いを絶やさない人が、きっと今頃怒り狂っているに違いないと思って友人たちは家まで訪ねて行くと、中座の非礼を詫びた後、文句一つ言わずにみんなを歓待。
友人のみならず世間の人たちから「正真正銘の大人物」と讃えられた。
実はこの笑顔の人格者は、家にある大きな甕の中に不平不満・怒りを大声でぶつけて蓋をし、あとはスッキリにこにこしていたそうな。」


ストレスを溜め込まずに全て吐き出す発散法の名人だったわけです。