落語

米揚げ笊(その2)

時代劇は専ら『水戸黄門』のマーです。『米揚げ笊』の後半は枝雀に語ってもらうことにします。 《以下、主にHP『特選上方落語覚書』1981/11/22 枝雀寄席(ABC)(1981.11.22)より引用》 ■いま表で大きな声がしてるが、あら何じゃ? ▲笊屋が米揚げ笊を売りにまい…

米揚げ笊(その1)

お正月に相応しい(?)縁起かつぎの噺から。 新年は特にゲンを気にする人がよくいますが、この「ゲン」は「縁起(エンギ)」をひっくり返してギエン⇒ゲンとなったもののようです。 ギョーカイの方は、六本木を「ギロッポン」と呼んで気取るそうですが、発想…

二番煎じ(その2)

2の組を送り出すと、世話役は番小屋の戸締りを命じ、徐に月番に娘が持たしてくれたという瓢箪に入れた酒を回し飲みしようと提案。 ところが、頭の固い月番は「お役人に見つかったらどうなる!あなたは諌める立場にある先生役でしょう」と固辞し瓢箪を没収、…

二番煎じ(その1)

《このところ落語という古い題材を専ら取り扱っていますが、新しいお笑いという点では、12月26日(日)に放映された『M-1グランプリ』は見応えがありました。参加漫才師4835組の頂点に立ったのが「ダブルボケ」の『笑い飯』。正確に言うボケとツッコミがコン…

崇徳院(その2)

熊さんが、「瀬をはやみ〜」の書きつけ以外手がかりのない先方のお嬢さんを見つける手立てがないと言いかけた際の、親旦那の命令が強烈です。 ■「分からん」といぅたかて日本人やろ? ▲そら、日本人でんがな ■日本人なら、これから行って大阪中探しなはれ。…

崇徳院(その1)

このところ、落語鑑賞ブログになりつつありますが、マーにとっては、落語をきっかけにあれこれつまらないことを綴るのが一番気楽みたいです。 今しばらくお気楽独り言にお付き合いくだされば幸いです。 この噺は上方発祥のようです。高津神社へのお参りがき…

小言幸兵衛&搗屋幸兵衛(その2)

出しかけたお茶、羊羹も引っ込めて、「せっかくだが貸せない」 理由は「長屋で心中が起こってはたまらない」 幸兵衛「…考えてごらんなさい。歳はァ20歳でしょ?ねえ?でェ、職人として腕がよくて、男っぷりがいいン、ねえ?ひとりもんなんだ。こんな物騒な…

小言幸兵衛&搗屋(つきや)幸兵衛(その1)

上方落語ではあまり聞かないので関東の噺みたいです。 文句ばっかり言っていて、その癖特段の悪気や後腐れがない長屋の大家さんの、相手を選ばぬお小言そのものや想像力の突飛さが可笑しい。 こういう人は、ブツブツ文句を言う瞬間にストレス発散していそう…

胴乱の幸助(その3)

こんな風に街中のたわいもない喧嘩を治めるだけならよかったのですが、この親っさんにも「見事あの騒動を治めた」ヒーローと言われてみたい虚栄心があります。芸事のイロハも知らない仕事一筋だった親父がよりにもよって浄瑠璃の稽古場でちょうどやっていた…

胴乱の幸助(その2)

悪い連中がいるもので、お金の持ち合わせがない時に小料理屋で一献傾けたいときに喧嘩のふりをして、そこを通りかかった件の親父に間に入ってもらい、タダ酒に預かろうという輩が登場します。ただ酒目当てで喧嘩を始めた2人の間に入った親っさんは、このけ…

胴乱の幸助(その1)

個人間、あるいは組織や国家の間でも仲違いや諍いの話はよくありますね。 何とか穏便に円満に仲良くできないものでしょうか。 個性と個性とのぶつかりは他者の無視、嫌悪あるいは排斥を伴わざるを得ないのでしょうか。 とても難しい課題ですが、親和の可能性…

寄合酒(その2)

かくして、銘々不適切な(?)手段で酒や肴を調達し、これから料理。ところがこれが思いがけぬ展開に。 まず、ご馳走を横取りされた赤犬の逆襲。Aがこれからの宴会を取り仕切る親父。Bが頼りない調理人。 A「言ぅこと聞かなんだら(赤犬を)バ〜ンとくら…

寄合酒(その1)

肴や酒を銘々が持ち寄って飲み会をするという噺で、例のリンクフリーとのことで重宝しているライブ記録http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/index1.htm でも、人気ランキングの89位(475作中)に顔を出しています。この噺には落語のお惚け(枝…

鹿政談(その2)

江戸時代、奈良の鹿はご神鹿(しんろく)とされ、誤って殺しても死刑だったとか。 割り木が当たって息絶えた犬と思い込んでいた動物はこともあろうに鹿! 正直者の豆腐屋は、即刻お白州へ。当時奈良の町奉行は情のある裁断が評判で、その後江戸北町奉行に栄…

鹿政談(その1)

平城遷都1300年祭で湧く奈良(当地在住の友人によると盛り上がりを欠くそうですが)でまず連想するものといえば、大仏、鹿あたりでしょうか。 いきなり脱線しますが、下の写真集はなかなかおもしろかったです。素人っぽい構図の写真にかえって親近感を覚…

軒づけ(その2)

《音程が怪しい素人集団だけに、軒づけには三味線が不可欠。ところがいつものメンバーが用事で、急遽代役に指名されたのが、紙屑屋のテンさん》 「え? 紙屑屋のテンさんいぅたら『クズ溜ぁ〜って〜ん』言ぅて、チギ持ってカゴ持って来るあの? あらまぁ〜、…

軒づけ(その1)

「のきづけ」という風習自体、文化財ですが、かつて浄瑠璃が庶民の身近な娯楽だった頃、きちんとした会場で演ずる腕になるまで、数人で各家の軒先を回り、浄瑠璃の素人流しをやっていたことがあったそうです。 「流し」という言葉もタクシーくらいしか馴染み…

堪忍袋(その2)

大きな甕を置く場所もない狭い長屋故、大家さんは、堪忍袋を作って代りに使うことを勧めます。 案外律義なこの夫婦、言われたとおり、喧嘩文句は堪忍袋に思いっきりぶちまけて、そのあと「ひゃはは」、「ひっひっひっ」と作り笑い。 腹に溜まっていたモヤモ…

堪忍袋(その1)

『厩火事』、『口合小町』同様、喧嘩の絶えない夫婦が登場。 喧嘩の仲裁に入った大家さん、次のような中国の故事を引いて、笑い合ったところを見たことがないこの夫婦を諭します。 「(あなたたち夫婦と大違いで)人前でいつもにこやかな笑みをたたえた人が…

狸の賽

鶴の恩返しならぬ狸の恩返しの噺。 ただ、こちらはサイコロ賭博の手伝いで、いわゆる「公序良俗」には反しますが… 浦島太郎に出てくる亀のように、子供たちに苛められていたところを助けてくれた男に恩返しするため、男の家に、まだ幼いその狸がやってきます…

文違い(その2)

次に、お金を無心していた方がやりとりの中でいつしか優位に立ち、貸し手がついには「頼むからこのお金を持って行ってください」とお願いする立場に陥ってしまうところ(前回取り上げた『かけとり』にも喧嘩好きの酒屋が、払いがないのに泣く泣く領収証を書…

文違い(その1)

騙しの連鎖というか、女郎が馴染み客を騙して用意した20円を、その女郎の間夫(まぶ・本命の客)が騙して受け取り、その男は自分で集めた30円と合せた50円を他の女に貢ぐという、お金が順々に流れていく図式の話です。 お金が流れていかず元に戻るパタ…

かけとり(その2)

お次は芝居好きの醤油屋さん。奥さん(意外と芸達者。芸は身を助ける)に三味線まで弾かせて、近江八景(この落語もいつか取り上げたい面白い噺)の歌で言いわけ。 「心、矢橋(やばせ)にはやれども、…元手のしろはつきはてて、膳所(ぜぜ、銭)は無し、貴殿に顔を…

かけとり(その1)

《今日が、ブログ開設以来150回目の書き込みにあたります。 だんだんずぼらになって、完全週休2日制になりつつありますが、行き当たりばったりで綴ってきた割には、思いの外早くこの日を迎えた気がします。 取りあえず書いてみたいことだけでも、おそら…

刀屋(その2)

徳「(親身な主人に少し打ち解け、実は山賊対策でなく、友達が奉公先のお嬢さんといい仲になって奥に知れて暇を出されと(なお嘘の)説明を始め、)…あろうことかあるまいことか、そのお嬢さんのところイ、今夜婿が来るってン。冗談じゃない!」 主「(裏切…

刀屋(その1)

刀屋の主人(かなりの年輩)が血気に逸る若い客を宥めるくだりが噺の中心ですが、なんといっても主人の語りに味があり、「こんな年寄りが身近にいればいいのになぁ」と思えるほどです。 奉公先のお嬢さんと恋仲になったのが明るみに出て暇を出され、さらには…

お見立て(その2)

ところで、嘘をつく際、大脳皮質のうち、判断や情動に関連する前頭前域や帯状回が活動するなど、本当の話をするとき以上に脳が活発に働くそうです。 嘘は辻褄合わせの技を伴いますから、正直にありのまま話すよりも高次の精神活動といえます。 最新のfMRI(機…

お見立て(その1)

登場人物は3人。我儘で頼み上手な花魁・喜瀬川、頼まれると断れないお人好しながら、お客と花魁の間を取り持つ「仲どん」が務めの喜助、それにどこか間の抜けた武骨な馴染み客。 夫婦約束までしたのに、登楼した相手が死ぬほど嫌いだという花魁の意を受け、…

看板の一(その2)

サイコロ賭博に興じている若い連中が近所のご隠居を引っ張り込む。 半ば強引に参加させられたこのおやっさんは、胴元を引き受け、惚けを装って壺皿からわざと1の目のサイコロを外へこぼして見せ、みんなにピン(1の目)を張らせておいて、一転そのこぼれた…

看板の一(その1)

落語には、誰かがうまくいったり、いい思いをしたりするのを垣間見る、あるいは感心するような話を聞かされたときに、そっくり真似をして自分も満足しようとする人の話がよく出て来ます。 『時そば』、『佃祭』のように、傍から見たり聞いたりしたことの真似…