刀屋(その2)

徳「(親身な主人に少し打ち解け、実は山賊対策でなく、友達が奉公先のお嬢さんといい仲になって奥に知れて暇を出されと(なお嘘の)説明を始め、)…あろうことかあるまいことか、そのお嬢さんのところイ、今夜婿が来るってン。冗談じゃない!」
主「(裏切られた見返しに婚礼の場に乗り込んで新郎新婦を叩っ斬る友達の手伝いをすると言い張る徳三郎に、友達は死ぬ気で働いてもっといい女を女房にして見返してやればよいとか、どうしても無理なら人斬りをするよりは自分で川に身投げでもすりゃいいなど提案した後)世の中ね、何でもそうなんですよ、そうあんまりむきンなって思い詰めちゃいけないんです。世の中というものは、もうちょいと粋に生きなくちゃいけません。ねえ?」


一途に息急き切って情のまま行動しようとする徳三郎を優しく受け止めようとする刀屋の主人。


年の功と言いたいところですが、「もうちょいと粋に」生きることを忘れ自分と異なるテンポの他人を(刀ほど鋭利にバッサリではないにせよ)斬り捨てようとする老人も少なくない気がします。
若者のその場凌ぎの嘘を性急に咎めるのでなく、「本当は違うんでしょ。ねえ?」と歩み寄りながらいつしかほんわかとしたペースに誘い込んでいく、雰囲気のある年寄りになれればいいなぁと念じていますが、どうなりますことやら。