お見立て(その1)

登場人物は3人。我儘で頼み上手な花魁・喜瀬川、頼まれると断れないお人好しながら、お客と花魁の間を取り持つ「仲どん」が務めの喜助、それにどこか間の抜けた武骨な馴染み客。


夫婦約束までしたのに、登楼した相手が死ぬほど嫌いだという花魁の意を受け、馴染み客に向かって「緊急入院して会えない」と取り繕う喜助。
客から思いがけず「夫が見舞いに行くのは当たり前、案内しろ」と要求され、「見舞い客お断りとの吉原の法(もちろん出鱈目)があってダメ」と詭弁を弄するも、「国許の兄として行けばよかっぺ、店の主人にそうめえそ(証明書のこと、このように一事が万事訛っている)を書いてもらえ」と返され一旦退散。


喜瀬川になおも哀願された喜助は、改めて「2ヵ月店にご無沙汰だったのを花魁は気に病み、実は入院でなく焦がれ死にしました」と嘘の上塗り。
涙ながらに明かしたのが真に迫っていたのか信じてもらえたものの、今度は「墓参りに行くから案内しろ」と急かされる始末。


再度の不首尾を報告すると、「山ほど花を供えて墓石を隠し、線香10束で煙幕を張れば、ばれない」とまたも喜瀬川に無理難題を押し付けられ、喜助は、次々と他人の墓に客を連れていきますが、いずれも見破られ、ついには「何でもいいからよろしい墓をお見立て願います」と開き直ります。


客と花魁の間を行ったり来たりするたびに、二進も三進もいかなくなり、窮地から逃れようとして喜助が繰り出す無茶苦茶な嘘と、いかにもわかりそうなこの嘘を案外真に受ける客とのやり取りが笑いの中心です。