お見立て(その2)

ところで、嘘をつく際、大脳皮質のうち、判断や情動に関連する前頭前域や帯状回が活動するなど、本当の話をするとき以上に脳が活発に働くそうです。
嘘は辻褄合わせの技を伴いますから、正直にありのまま話すよりも高次の精神活動といえます。
最新のfMRI(機能的磁気共鳴画像装置)で脳の働きを確認すると、嘘をついているときの活動域は通常時より広く、画像診断により90%以上の確率で嘘発見ができるとやら。
『お見立て』に登場する喜助の頭もフル回転(それにしてはお惚けですが)だったに違いありません。


随分前の話ながら、マーは、全国から募集した提案コンテストで審査のお手伝いの仕事をしたことがあります。
関係する専門分野の審査委員が、提案の一つ一つについて真面目に検討していたところ、事務局のエライ人が「内容は二の次。入選作品の地域バランスこそが肝腎(入選作が特定地域、たとえば東北地方から応募されたものに偏ると望ましくないの意)」と言い出して、審査は迷走。
ある委員は途端にやる気をなくして、入選候補として各委員5作品ずつ推薦すべきところ提出されたのは4点のみ。
「先生、あと1点足りませんが」とお尋ねすると、「え、一つ足りなかった?君、もう何でもいいから適当に見繕っておいて!」と言い残して途中退席。
さながら現代版『お見立て』の一場面のようだったのを思い出します。