本棚

こんな本おもしろかったです(その16)

印象派の誕生―マネとモネ (中公新書)吉川 節子中央公論新社発売日:2010-04ブクログでレビューを見る»幅広い文献を渉猟し、印象派誕生に関わった魅力的な人々を丁寧に描いています。全体に著者は頭で絵を観る人のようで、絵の中の人物や調度についてそれぞれ…

幸福感について(その2)

まず、あっさりとらえるなら、たとえばダウンタウンの浜ちゃんがTV『ダウンタウンDX』で芸能人を先日目撃したという視聴者ハガキを読み上げる最後に付け加える「死ねばいいのに」の感じです。 これは「ファンが見てるかもしれないのに何しとんねん」とい…

幸福感について(その1)

『最小不幸社会』という言葉もありましたが、同じ状況に置かれていても「幸福」か「不幸」かの感覚は人によって違います。 傍目から見て文句なしの環境なのに「自分ほど不幸な者はない」という物言いは結構ありそうです。 下の本では、ありがちなそのような…

こんな本おもしろかったです(その15)

死ねばいいのに京極 夏彦講談社発売日:2010-05-15ブクログでレビューを見る»読み方としては無理があるのかもしれませんが、渡来健也は鹿島亜佐美の分身か霊魂のように感じます。亜佐美が死後に健也の姿を借りて身近な(外目には酷い仕打ちを受けた人)人た…

こんな本おもしろかったです(その14)

≪ご覧のとおりのコンパクトな新書ですが、ざっと見渡しただけでも、「返報性、互酬性、互恵性の原理」、「過剰な正当化効果」、「代理罰(代理強化)」、「交渉とコンフリクト」、「服従」、「リアクタンス(反発)」、「ブーメラン効果」、「反駁付き両面提…

こんな本おもしろかったです(その13)

≪明日は、マーが旨いと思うお酒について綴ってみたいと思います。≫新世代日本酒が旨い 角川SSC新書 いま飲むべき全国の36銘柄かざま りんぺい角川SSコミュニケーションズ発売日:2010-01-10ブクログでレビューを見る»珍しく旨い酒のフィーリングが一致した本…

こんな本おもしろかったです(その12)

だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学 (光文社新書)石川 幹人光文社発売日:2010-04-16ブクログでレビューを見る»大学での授業の反応を踏まえた学生向けの進化心理学入門書とのこと。幅広い分野にわたる関連文献の紹介が多く、オリジナリティ不足との批…

こんな本おもしろかったです(その11)

シューカツ!石田 衣良文藝春秋発売日:2008-10ブクログでレビューを見る»マスコミ業界(有名TV局や出版社)の就職活動をいかにもそれらしく描いています。これが実像かどうかは、首尾よく就職できた人とうまくいかなかった人で感想が分かれるかもしれませ…

あすの俺は、今日のオレより進化する(その2)

ボクサーが渾身のパンチを繰り出すとき、ピッチャーがまっすぐの剛速球を投げ込むとき、囲碁棋士が碁石をピシリと打つとき、それぞれの動作は、後に続く相手の動き次第で成否が決まりますが、その一瞬にはどうなるのか全くわからないけれど、主人公は結果(一…

あすの俺は、今日のオレより進化する(その1)

先日、エスカレーターでいかにもボクシングジムの練習生風の体格のよい男がボロボロになった『ボックス!』(百田尚樹著)を読んでいるのに出交わしました。読み始めると物語の中に入り込んでしまう力を秘めた作品だと思います。 自分でもよくわからないのです…

待つこと(寝かせておくこと)も大切

「待てば海路(甘露)の日和あり」という言葉があります。 学校や職場では、宿題提出の期限や製品の納期などに追われることが多く、「待っていたら叱られる」場面ばかりのようにも思えます。 でも立ち止まることを忘れてしまったら、自分を見失ったり、出るは…

こんな本おもしろかったです(その9)

こころの旅 (神谷美恵子コレクション)神谷 美恵子みすず書房発売日:2005-01ブクログでレビューを見る»神谷美恵子著作集は、自伝・日記・ヴァジニア・ウルフの病跡研究以外は、学生時代にほぼ読んでいます。神谷美恵子の読者は、多少なりとも人生の意味に関…

「大勢いると一人一人はサボりやすい」理論・続き

先日、社会的手抜き(Social Loafing)の話題を取り上げましたが、下の本では、「仕事場面でのチームワークや集団行動がともすると個人単位では無責任に傾きやすい」として、神戸大の金井先生(経営学・キャリア論)が50年も前のキティ・ジェノヴィーズ事件を…

こんな本おもしろかったです(その8)

型破りのコーチング (PHP新書)平尾 誠二,金井 壽宏PHP研究所発売日:2009-12-16ブクログでレビューを見る»対談だけにあっさりした議論が主体ですが、題名どおり「型にとらわれない」発想のヒントが随所にみられます。セオリー以上に大切な状況判断、無責任に…

こんな本おもしろかったです(その7)

レオナルドの謎 (イメージの森のなかへ)利倉 隆二玄社発売日:2008-02-20ブクログでレビューを見る»一昨年〜昨年にかけて10巻発行されているシリーズ。名画でも知らないことやつい見過ごしてしまう点がたくさんあることに気づかせてくれます。『モナ・リザ…

お笑いを論ずると結構奥深い(その2)

ナンチャンは、さらに、お笑い談義にとどまらず、自らを客観視する意義も説いています。 「もちろん自分の『やりたいこと』を追求する姿勢は大事ですが、それが見つからなくて道に迷ったときには『他人の目から見た自分』の適性について考えてみるのもいいの…

お笑いを論ずると結構奥深い(その1)

本の紹介にも書きましたが、『狂言でござる』(南原清隆著)は案外真面目な本です。 アメリカならそれだけで笑いになるボケにツッコミを入れて初めて日本人には笑いのスイッチが入り、このことは狂言に既に見られる「2つ揃って初めてひとつ(たとえば太郎冠者…

こんな本おもしろかったです(その6)

僕の「日本人の笑い」再発見 狂言でござる ボケとツッコミには600年の歴史があった南原清隆祥伝社発売日:2010-01-30ブクログでレビューを見る»まだ4年目の「現代狂言」ですが、この本を読んでぜひ観たくなりました。ところが、東京公演終わったばかり。来…

こんな本おもしろかったです(その5)

てぶくろ―ウクライナ民話 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)福音館書店発売日:1965-11ブクログでレビューを見る»このお話には、引越しで転入してなかなか幼稚園に馴染めなかった愚息の学芸会で、舞台に登場した主役のおじいさんが愚息本人だったのを当日…

「約束」ってなんだろう

村山由佳『約束』は一見絵本風ですが、数年前、中学入試問題の出典上位作でした。脱線しますが、小学校6年生が解かされる国語入試問題文の手強いこと。かなり心得のある大人でも満点を取るのは至難です。「たかが小学生の問題」と侮れません。 それだけに、…

こんな本おもしろかったです(その4)

約束村山 由佳,はまの ゆか集英社発売日:2001-07-05ブクログでレビューを見る»大人も子どもも読める稀有な小説の一つ。挿絵の淡い色合いが好きです。重いテーマで気持ちが内に向かいがちなところで気分転換に外の景色を見てはどうですかと促してくれるよう…

こんな本おもしろかったです(その3)

透明約束川上 健一光文社発売日:2009-08-20ブクログでレビューを見る»バンクーバーオリンピック間近。この本は表題からはわかりませんが、カナダもの短編集です。「バンクーバーの雪だるま」という話もいいですが、一番気に入ったのは「夜間飛行」。ネジづ…

たまには哲学書などどうでせう(その2)

さらに、「ほんまかいな」という議論に移ります。「横縞よりも縦縞の方が『いき』であるといえる」 なんでそうなるの!?「横縞よりも縦縞の方が([注]両目の位置や動きから)平行線を平行線として容易に知覚させる・・・」 「縦縞には(横縞と違って)重力…

たまには哲学書などいかがでせう(その1)

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)作者: 九鬼周造出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1979/09/17メディア: 文庫購入: 15人 クリック: 50回この商品を含むブログ (90件) を見る九鬼周造『いきの構造』(岩波文庫)より。哲学書の古典で、優れた解説もいくつか…

こんな本おもしろかったです(その2)

キャベツくん (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)長 新太文研出版発売日:2005-02ブクログでレビューを見る» 一番好きな絵本の一つ。長新太の絵は学校の美術だったら何点もらえるのかビミョーなんですが、子どもの反応が飛び切りよかったです。読み聞かせて本…

こんな本おもしろかったです(その1)

上方落語 桂米朝コレクション〈2〉奇想天外 (ちくま文庫)桂 米朝筑摩書房発売日:2002-10ブクログでレビューを見る» 30年ほど前に創元社から『米朝落語全集』(全7巻)が出ていますが、それの文庫版にあたります。全8巻でほぼ100話。他にも枝雀、志ん…