こんな本おもしろかったです(その12)

大学での授業の反応を踏まえた学生向けの進化心理学入門書とのこと。幅広い分野にわたる関連文献の紹介が多く、オリジナリティ不足との批判はありそうですが、面白い話題満載で読み甲斐があります。
手段と目的に置き換えられる「至近要因」と「究極要因」との区分け(行動の究極的な目的を想定する意義)や、進化心理学の目標は「遺伝子に還元する」よりはむしろ「生育の歴史を重んじ、遺伝子に還元できるところは取り入れつつ人間に関する諸科学の見通しをよくする」こととする議論の周辺で、記憶力、生き残り戦略、さらには男のハゲまで身近なテーマが取り上げられ、読み飽きしません。
知識を伝えるだけでなく、発想の柔軟さや現実感覚も強調され、バランスのとれた内容と思いますが、「だまされ上手」の議論が物足りなく感じるのは、私の読解力不足でしょうか。