お笑いを論ずると結構奥深い(その1)

本の紹介にも書きましたが、『狂言でござる』(南原清隆著)は案外真面目な本です。
アメリカならそれだけで笑いになるボケにツッコミを入れて初めて日本人には笑いのスイッチが入り、このことは狂言に既に見られる「2つ揃って初めてひとつ(たとえば太郎冠者と次郎冠者)」の対の文化が背景にあるという見解は、定説かどうかわかりませんが、なるほどと思わせるものがあります。
『お笑いテクニック・ブログ』(http://blog.owarai-technic.com/) によると、ツッコミには少なくとも8パターンあるそうで、①「普通ツッコミ」(なんでやねんに代表されるボケに対する一般的なツッコミ)、②「のりツッコミ」(相手のボケにのった後、つっこむという方法。主に関西人)、③「ボケツッコミ」(ツッコミつつ、ボケるという方法。主にツッコミ担当がする)、④「引きツッコミ(すかし)」(ボケを流したり、つっこむべきところで、つっこまないなどの方法)、⑤「しぐさツッコミ」(言葉でなく、仕草でつっこむ方法)、⑥「一人ツッコミ」(一人でボケて、一人でつっこむこと。明石家さんまなど主にピンの人)、⑦「例えツッコミ」(何かに例えてつっこむこと。タカトシの「欧米か!」はこの類でしょうか)、⑧「メタツッコミ」(役に入っている相手に、役と関係ないその人の素のキャラのことでつっこんだりする)が取り上げられています。
補陀落通信』(http://www.potalaka.com/index.html) というサイトにもツッコミの話が出ていますが、無理やり技や大阪人の気概と結び付けて見ているのが面白い。
「相手のボケにとりあえずノっておいて、一呼吸置いてからツッコむ(上記の「のりツッコミに」相当)、これが応用技である。これができれば、胸を張って「一人前の大阪人」と名乗ることができる。」
「そして、さらに高度な技、「ツッコミボケ」(上記の「ボケツッコミ」に相当)がこれ。
 A「きみ、血液型、何型や?」
 B「子供の頃調べたときはB型やったけど、最近は調べてへんからわからへんわ」
 A「あほ、血液型がそんなにコロコロ変わるかいな。結婚してはじめて変わるんや」
 このように、相手のボケにとりあえずツッコんでおいて、その上でボケ返している。
 …(中略)…(ツッコミ役Aには)「ウケを取るのは、相手に渡さない」という大阪人の負けず嫌いの性格が見事にあらわれている。…(中略)…そして、アドリブでこの「ツッコミボケ」を使いこなせるようになると、晴れて「おもろい奴」との称号を得ることが出来る。すべての大阪人は、この称号をめざして日夜奮闘努力しているのだ!」
(以上、第22回『ボケとツッコミ』)⇒大阪人って一体…?
もっとも、マーは、ボケに畳み掛けていくツッコミが日本人の笑いに不可欠とまでは思っていません。ツッコミは合気道のようにタイミングをとらえて瞬時に小気味よく使わないと、ボケで浮かび上がってきたイメージの広がりを殺すことになる(コミカルな海外の古典にこれでもかと細かい注をつけた翻訳本が類例)と仮説を立てていますが、これについては、もう少し考察を深めてから後日成果(?)を披露できれば。