こんな本おもしろかったです(その9)

神谷美恵子著作集は、自伝・日記・ヴァジニア・ウルフの病跡研究以外は、学生時代にほぼ読んでいます。
神谷美恵子の読者は、多少なりとも人生の意味に関心のある方が大半だと思いますが、私も中年になって「俺の人生って何だったのか」、「これまでの生き方でよかったかどうか」を自問し、この本に手がかりを求め再読しました。ところが次のような箇所に出会いました。
「自分の過去についてこそ、エポケー(判断停止)が必要とされているのではなかろうか。……自分の過去の歩みの意味は自分はもとより、他人にもどうしてはっきりとわかることがあろう。その時その時を精一杯に生きてきたなら、自分の一生の意味の判断は人間よりも大きなものの手に委ねよう。こういうひろやかな気持になれれば自分の過去を意味づけようとして、やきもきすることも必要でなくなる」
要するに「まぁ、ええやん(それより今を大切に)」ということでしょうか。
ありがたい「期待外れ」の、しかも深い答をもらった気がしています。