日本酒のお話再び

NHKテレビの『プロフェッショナル 仕事の流儀』前回は、杜氏の方でした。農口というお名前どおり、米や、発酵の過程でバランスを取るのが難しい麹菌・酵母菌と対話できる達人でした(聞き手の住吉美紀さんがブログで「猛獣使いならぬ、猛菌使い」と表現していたのは言い得て妙です)。
番組では、農口さんは杜氏の家系で、静岡・三重の蔵元で修業し、腕を見込まれて郷里の石川で異例の若さで蔵元(「菊姫」?国営放送故、紹介はありませんでしたが)を任されたものの、地元の愛飲家から「こんな味わいのないのは酒じゃない」と酷評され、米の旨みを引き出せるようになるまで10年余りを費やしたとのこと。
修業の場静岡は、「磯自慢」や「開運」をはじめ、すっきり・あっさりした酒の本場。石川では、もっとどっしりした濃い趣の酒が求められるので、静岡仕込の酒づくりが受け入れられなかったのでしょう。
映像からは、今は「常きげん」という銘柄を預かっておられるよう(テレビの影響で早くも品薄になっている模様)。確かこの酒も「これが米の真髄だ」と自己主張はっきりのタイプだった印象があります。
「常きげん」が一つの到達点だということはわかりますが、濃厚芳醇ばかりが名酒でもなかろうとも思います。
そこで、番組を補完する気持ちも込めて、今はどちらかというと淡麗派(容姿端麗派?)のマーが特に美味しいと感じているお酒を一つ紹介します。
高橋酒蔵『東北泉』=十六羅漢で有名な山形県遊佐郡吹浦の、きれいな海のそばにある蔵元です。海の水質さながら、すっきり透明度の高いお酒が多い。香りもしつこ過ぎず適度だと思います。あまり都心のデパートには並んでいません。山形県の酒というと、「出羽桜」、「初孫」あたりがせいぜいで、品揃え豊富なところで「樽平」、「米鶴」が並ぶくらいではないでしょうか。私が初めて山形を訪れた際、駅から程近いビルのてっぺんに広告看板が出ていたのは「高清水」という秋田の酒でした。PRをあまりしない県民性とはいえ、隣県の酒の方が目立っているのを何とも思わないんでしょうか。自県のいいものはもっと進んで宣伝してほしいと願っています=
〔商品のいくつか([注]マーはこの酒蔵と付き合いはありません。以下は、お正月などに取扱酒店に注文したことのあるものです。)〕
大吟醸・芳(かおり) 日本酒度+5、酸度1.3 720ml  3570円
純米吟醸・瑠璃色の海 日本酒度±0、酸度1.3 720ml  2625円
吟醸・色好い返事 日本酒度+3、酸度1.2 720ml  1680円
古酒・吹浦の風 日本酒度+3.5、酸度1.5 1.8l  2625円
このほか、「へいおまち」という雄町を原材料とした大吟醸など、ネーミングに特色があります。そういえば、山形は他の蔵元にもF1(米鶴)、くどき上手、上喜元(これも「常きげん」に劣らぬ質の高い酒)など、おもしろい名前のものがあって楽しませてくれます。