働くことと動くことについて(その3)

職場でせめて気持ちだけでも役に立とうという気持ちになるかどうか、やり甲斐を感じられるかどうかは、会社の側の配慮も影響するようです。
勤務態度に、公平なルール(関係者の意見の反映や分け隔てない評価姿勢など)と成果主義的な評価(責任の重さや業績に応じた報酬など)がどう影響するかを、雇用不安の大小に分けて調べた最近の研究(”When Do Procedural Fairness and Outcome Fairness Interact to Influence Employees’Work Attitudes and Behaviors? The Moderating Effect of Uncertainty”David De Cremer et al. (2010),p.291-304).Journal of Applied Psychology)によると、特にリストラ等の雇用不安が大きい部署では、意見が自由に言えて公平なやり方で仕事が進められていくという安心感があって、結果をうるさく問われない環境で、生き生きと働ける傾向が認められるとのことです。


今年の労働白書でも「…、個人の成果・業績を評価する取組においては、その仕事に関わる多くの人々とのチーム―ワークをも尊重しなくてはならない。…大企業中心に進展した業績・成果主義の取組は、労働者の個人主義的傾向を強め、評価の視点が短期化しがちであったという指摘もあり、企業における評価の視点に、今見直しがなされている」と記されています。
「誰かが、社員一人一人の仕事ぶりを関心を持って、長い目と広い心で見つめていてくれる」という信頼感が、社員の仕事意欲や(能力の個人差は大きいものの)貢献度を支えるということでしょうか。


マーのように自己アピールが下手で、職場では「こんなこと思いついたんですけどいかがでせう」と油売りをして同僚の仕事の邪魔をばかりしていたのでは、能力不足と烙印を押されても仕方ありませんが、「プレゼンできなきゃ、声が大きくなけりゃ、認められない」、あるいは「隣の人がどんな仕事や苦労をしているか、そんなの関係ない(小島よしお風)」(これらは白書中の『労働者の個人主義的傾向』に含まれる要素だと想像します。)社会や職場よりは、もう少し長閑でアットホームな風土の方が呼吸がしやすい感じがしてなりません。


単に人偏が一つ加わるだけですが、仕事をする人の動きが働き(役に立つこと)に転化するまでの距離は大きいと言えそうです。