堀の内(いらちの愛宕詣で)&池田の猪飼い(その2)

『堀の内』では、極度のそそっかしさを治すためお祖師様詣りに出かけたはずが、目指すべき方向と逆方向に歩き出して、途中で人に尋ねてそのことがわかって逆戻りし、家を出て随分経ってから出発点の自分の長屋に帰って来てしまい女房に呆れられますが、このあたりは『粗忽の釘』でも似た場面が出てきます。
途中で行き先まで忘れてしまい、道を尋ねた相手に「私はどこへ行くんでしょう?」と尋ねる始末(板さんに辞められた店の主人が慣れない手つきで鰻を手に走り回り、行き先を聞かれて「前に回って鰻に聞いてくれ」という噺『鰻屋』をふと思い出しました。)。
『池田の猪飼い』では、「おんなじ道尋んねるのんでも、忙しぃにしてるやつに尋んねんことには、落ち着いたやつに尋んねたらゆっくり教えよって、手間がかかってどんならん、どこぞ忙しぃしてるやつ……」と尋常ならざる理屈で、妻が産気づいて大慌ての人のよい男に長々と道を尋ねる(それも、「つかんこと尋んねまんねんけど、あんた丼池の甚兵衛はんちゅう人ご存知ですか?」とか「お初天神の西門のところに「紅う」といぅ寿司屋があるが、ここでわたいが寿司を食ぅと思うか食わんと思うか?」(そんなことが分かりますかいな)「分からんちゅうたかて、人間には当て推量ちゅうもんがおまっしゃろ。間違ごぉてもよろしぃ言ぅてみなはれ」(寿司屋があるねんやったら、食ぅねんやろ)「食いたいけど、食てたら銭が足りまへんねん」など、迷惑な質問ばかり)ところが思わず吹き出します。
ただ、こちらは案外方向感覚は確か(「   」内の会話は、http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/index1.htm の桂枝雀ライブ録音記録より引用)。
またまた、脱線しますが、マーは、よく道を尋ねられます。言葉がわからない外国でも容赦なし(まわりにネイティヴがたくさんいるのにどうして私をご指名?)。
上の噺ではないですが、電車に間に合うかどうかで走っているとき、さらには、歩道に面した店頭で品物を眺めているときに背後から通行人に道を尋ねられたことがあります。
大概は周囲に他の人がいるのにどうして私が選ばれる(?)のか。きっと、よほどスキがあるのに違いありません。