絵画の見方

美術展ではおもしろい鑑賞の仕方をする人に時々出会います。ピカソ展で「この絵、下手やねえ」と大声で評価したり、「これがピカソの絵、ふーん、ピカソやねえ」とよくわからない感想を述べたり。いずれも大阪のおばちゃんでした。
下の本(今のところ10巻シリーズ)は、同じ絵でも分割したり、敢えて色合いを変えてみたり、特定部分を大写しにするなど、他の画集にない工夫が凝らされていて、絵や作家と対話しているような錯覚におちいるほどです。
わかりやすく丁寧に説明しているので、収録作品の少ないのがうらみですが、「絵をみる」とはどういうことかヒントを授けてくれます。まず、あの大阪のおばちゃんに読ませたい!(「やっぱりピカソやん」でおしまいかもしれませんが。)
稀に日曜画家の展覧会を覗くと、よく描けている作品もありますが、名画展と「何か(よくわからないが)違う」のです。日曜画家展の優秀作と評価が定まっている名画とを見分ける審美観に恵まれていないマーでもわかる、この雰囲気の違いは何でしょうか。
少なくとも傾向としてはっきりしているのは、「何が何でもこの風景(静物、人物など)を描きたい、見てもらいたいという意志」の違いです。素人の場合、「上手な絵だけれどぜひ再び見ようとまでは思わない(どうしてもこの場面が描きたかったんだろうなとは思えない)」作品が多い気がします。
ピカソの稚拙にすら見える絵を見極める眼力や知識を持ち合わせていない私ですが、その作品のいくつかは前に立つと、素通りするのが躊躇われるような強烈なパワー(ひょっとしたら、その絵が「俺(私)を見てくれ」と叫んでいると感じさせるくらいの)を秘めているような気がするのです。
時を経ても向き合ってみるとパワーをくれものが、抽象画、写実画の区別を問わず、私にとっての「名画」です。