かわりめ(その1)

米朝さんの語りが好きで同じCDを2桁回聞いています。それでも改めて聞くとやはり可笑しい。落語の魅力です。
(以下、『桂米朝コレクション3(ちくま文庫)』を参考にしましたが、多くは耳に残っている声に拠りました。)
まくらは、酒呑みの話です。「人間関係が滑らかになる」、「初対面の人とでも杯を交わせば意気投合できる(甘味ではこうはいかない)」、「飲み屋で初対面の人と酒を飲んで打ち解け、家族構成から月給から税金までみんなしゃべってしまい、ついには娘と息子の縁談まで勝手に決めて帰宅し、翌朝になってよく考えたらどこの誰やらわからなかった」、「『まだ酔うてへん』と意地を張る人はかなり酔っ払っているが、『すっかり酔いました』という人に限って案外しっかりしていて、お土産の折詰の催促をしたりする」など、酒の効用や、それらしいエピソードが次から次へと出て来ます。
酔っ払いの描写も生き生きしています。「狭いながらもー楽しーい我が家―♪」と歌いながら歩く酔っ払いが車屋に「ぜひお乗りを」といわれ、とすぐ目の前に見えている家まで車で帰宅し呆れられたり、奥さんに「そんな大声で歌うとご近所が『うるさくて寝られへん』とぼやきはる」と言われ「そりゃ悪かった、ご近所に謝りに行ってくる」と出かけようとして止められたり。さらには、寝る前にあと少し熱燗がほしいと「ご近所行って酒の燗をつける火種をもろてこい」と無理強いして、奥さんに「こんな深夜にご近所は夜中の夢」と返されると、「さっきはうるさがって、ぼやいてはったんとちゃうのか」と妙に冷静に矛盾をついたり、「いかにもこんな人いそうだなぁ」と思わせてくれます。