滞在記・旅行記(その1)

冬季五輪開幕で、テレビに雪景色が映し出される時間が増えました。今年は日本でも雪が多いみたいですね。私にとって雪といえば山形県。ここでは、仕事の関係で2年間過ごしました(就職してからこれまで10回引っ越し)。実は、転勤の内示を受けたとき、山形県の正確な場所が思い浮かびませんでした。知っているのは、「さくらんぼと蔵王スキー場」くらい。私のある友人は「蔵王スキー場には時々行きますが、山形はまだ行ったことがなくて」と惚けていたほどです。
吉里吉里国(山形出身・井上ひさしの作品。もう知らない人が多いかも)に行くような思いで山形空港に降り立ちましたが、案に相違してわが人生の中でも最もお気に入りの県となりました。
転勤時、子どもは零歳児でしたが、まずこの子に変化が現れました。大阪生れのこの子はアトピー性皮膚炎で真っ赤になったほっぺたが痒いみたいで苦しんでいました。大学病院で処方された塗り薬も奏効せず悩んでいたところ、山形に住んで3ヵ月ほどで症状が解消したのです。おそらく、澄んだ水や空気のお陰ではないでしょうか。家は蔵王の水が供給される地域にあり、ミルクや料理はすべてその水を使っていました。おそるべき自然の力です。
山形は果物王国で柑橘類以外はたいていの果物がとれます。
野菜類も大都市で売っている物とは大違い。大根や山菜も採れたての山形産には生命力すら感じました。枝豆に「だだぢゃ豆」という庄内の特産があるのですが、これも味に深みがあります。最近、東京でも見かけることが多くなりました。
山形そばも外せません。県内に蕎麦店が数百軒はあるでしょうか。麺の太さ、そばつゆの濃さ、薬味など店や地域によってさまざまで、同じ県と思えないほど。中には、市街地から離れた隠れ家風のところや庭園の中にある店まであります。
芋煮は内陸の場合、牛肉、里芋、こんにゃく、長ねぎを醤油、酒、砂糖で味付けして煮込んだ簡単料理ですが、素朴な味がいい。「日本一の芋煮会」は毎年秋に開催され、3万食分の具材を鋳物技術を生かした超巨大鍋にブルドーザーで流し込むという、豪快なものですが、花笠踊りと並ぶ観光イベントと化し、最近はその芋煮を味わうのに大変な行列ができてしまうそうです。
米沢の牛肉、庄内の魚も格別ですし、県内全市町村に温泉があります。たとえば将棋の駒で有名な天童温泉の熱めで澄んだお湯は特に好きです。
山寺、羽黒山など千段を超える階段登りは骨は折れますが、小登山をしたような充実感がありますし、最上川舟下りも渓谷の中を船頭さんの舟歌を聴き、芋煮汁を啜りながら、ゆったりと進んでいく他にあまり例のない体験(紅葉・雪の時期は特におすすめ)です。
折に触れて、「知られざる」(?)山形での見聞も綴ってみたいと思います。