あわてない(その2)

かつて「頼んだ仕事はその日のうち(込み入ったものはその週のうち)に答の案を持ってくるように」という上司の元で働いたことがありますが、これは功罪相半ばだったかなと感じています。
よい面は、早く形にすることによって問題のポイントが見えやすくなったことです。
大概はそれなりの難問が下りてくるので、あれこれ思案しても簡単には結論が出ません。
少々いい加減でも対応方針を具体的に並べてみることで、大概のものは半分くらい解決(これではまだ合格ではありませんが)したように思います。
上司も完璧な正解を求めていたのではなく(もとより私にそんな能力はないことくらいわかっていたはず)、私の落第答案を見てから今度はご自身で対応方針を立てようとされていたのだと今振り返ってみると思います。
悪い面は、「とにかく速く」だけで仕事をしていると、そのうち要領を身につけて深く物事を考えなくなることです。
上司が働き者だと、適当なペーパーだけ渡して早くその仕事から解放されようとしている自分に気づくこともありました。


また、地域風土や社風の違いによって、要求される仕事の処理速度はかなり変わって来るように感じます。
ある県で勤務していた時、数人のスタッフがいる係に「この数字がわかるデータをください」と1時間もあればできる注文をしたことがありますが、2日経っても3日経っても出て来ません。
係員の能力からしてあり得ないので、きっとお願いを忘れてしまったのだと思って再度「このあいだのデータどうなりました」と尋ねたら、「来週中には何とか」と返事。
顧みれば長閑な雰囲気の職場で、期日を定めない限りは大概「来週中」。生きている時間やテンポそのものが上述の上司と根本的に異なるのだとしか言いようがありません。
でも、実際来週中で間に合う仕事だったら、早くからイライラしてみても仕方がない。


結局のところ、急かされる環境であろうが、のんびりした場所であろうが、車にたとえれば、今どこをどのくらいのスピードで走っているのか、これ以上速い(遅い)と追突する(される)のかがわかることが大切なのだと思います。
少なくともあわてて自分を見失ったり、自分と違う速度感覚の人を否定したりせず、「一呼吸おく」姿勢を心がけたい気がします。