大人とは…(その3)

もう一つは他者との関係。友だち100人いたって大人とは限りません。
家族や友人など近しい人は言うに及ばず、何かのきっかけで会話する相手や通りすがりの人を含めて、少し気をつければかけなくて済む迷惑をかけない(人が接するからには多かれ少なかれ互いに迷惑をかけ合うものだとは思いますが)ことや、意見や生き方が異なっても他の一人一人のかけがえのなさへの理解(「それぞれ違っていてもえーやん、そこが人生面白いところ」の発想)は、大人に、より期待されるでしょう。
さらには、落ち込んでいつまでも立ち止まっていたり、思考停止状態だと、全くの独り身でない限り、周囲が困惑することになりそうです。
だとすれば、あえてじっくり待つときを除いて、多くの場合、たとえ亀のようでも歩みを進めることがしばしば大人に求められます(この意味で「止まると死ぬのじゃー」という吉本新喜劇の、間寛平扮する杖を振り回す怪しい翁は深い本質に迫っています)。
5点目は、全体のバランスです。心のどこかが傷ついたり痛んだりしても、人間そのものがダメになってしまわない程度の図太さ。その意味で些細なことで激怒し電車に同乗した隣客を殴ってケガをさせるところまでいくのは、大人としての安全装置が壊れているといえるでしょう。
まだ足りない気もしますが、試しに、以上5点をかつて取り上げたこともある「社会人基礎力」(経済産業省のHPにいろいろ出ています)と比較してみると…。
ほぼ共通するのは、「主体性」、「規律性」(ルールや約束を守る)、「柔軟性」(意見や立場の違いへの理解)、「実行力」、「ストレスコントロール力」ですが、他は外れ。
具体的には、「働きかけ力」、「課題発見力」、「計画力」、「創造力」、「発信力」、「傾聴力」、「状況把握力」。
「傾聴力」一つ取っても「人の話を聞かない大人」がたくさんいるだけに、社会人=企業人と理解した上で「社会人基礎力」を眺める必要があるのでしょうね。
「状況把握力」は仕事に限らず、普段の生活でも必要ですが、企業人の場合は調査や分析など仕事そのものを指すことになりそう。
つい最近では、文部科学省関係で「国際成人力調査」というのがあって、こちらは「読解力」、「数的思考力」、「ITを活用した問題解決能力」の3つを上げていて、マー試作の大人度と共通点なし。
ここでの成人力は、英語のcompetencyの訳語なのですが、Cambridge Advanced Learner’s Dictionary(これは無料オンラインサイトで重宝しています。)によると、an important skill that is needed to do a jobとあり、competencyを用いた例文も仕事や学科に関わるものばかり。成人力というよりはむしろ仕事力とでも訳した方が近かったのでは。
落語は、大人度ゼロの大人満載です。こんな角度からも噺を眺めてみると意外な発見があるかもしれません。