パワーポイントと紙芝居(その2)

聴衆を前に画面を見せて語る点では両者共通。
違うのは、まず想定される場。
パワポでは、映写設備のある大小会議室・講堂等と幅が広いのに対して、紙芝居は自声の届く範囲が基本ですから、そう広くない。屋外がむしろ普通(ただ、この頃のお笑い芸人(鉄拳、パカリズム、中山功太我人祥太など)による広いスタジオで紙芝居やフリップを用いた漫談は例外)。
次に聴衆の密度。パワポは着席して見るのが標準ですが、紙芝居、特に屋外では興味津津の子供たちが語り部の近くに群がるので人口密度は相当なもの。
もう一つは、間。パワポの腕次第でどうにでもできるのかもしれませんが、画面と次の画面が重なるのを見たことはありません。
一方、紙芝居で次の画面に移る時、語り部は紙を半分引き抜きながら「さぁ、それからどうなる?」と観衆の目を引きつけることがよくあります。
まだ、他にも相違点があるはずですが、ここに挙げたものだけからでも、説明者と聞き手の間の距離(物理的なものはもちろん、それ以上に心や気持ちの距離)は紙芝居の方が近いことが多そうです。
観衆の反応をその都度確かめながら次の展開に変化を加える余地も、おそらく紙芝居の方が大きい。
対して、パワポは一通り説明してから「どうでしたか」、「ご質問は?」とシナリオが予め定まっていて、変幻自在性は乏しい感じがします(アニメーションの上手い活用でどこまでカバーできるかでしょうか)。
となると、説明者に求められる力量はどちらが大か明らかでせう(パワポなど必要なさそうな、「ほら、見て見て見て〜」と包丁やクリーナーを実演販売するマーフィー岡田(だったかな?)や「3点セット〜」のジャパネットたかた社長らの語りは、やはりスゴイ!)。
パワーポイントは自己表現やプレゼンテーションの有効な道具として、今や中学校から教えるところもあるみたいですが、これが上手にできることは、表現能力の一面に過ぎないのでは。
少々朴訥な語りでも聞き手の気持ちをまっすぐ受け止めて、その人の持ち味で返していく紙芝居流の説明能力をもっと見直したい気がするのです。