西ニツカレタ疲レタ母アレバ…(その2)

見知らぬ人に手を差し伸べることは、国際的にも日本人は少ないという見方があり、英米人と日本人の行動様式の違いに触れている本(『一歩すすんだ英会話』講談社現代新書、東後勝明著)にも「どうも我々(日本人)の心底には知らない人にはかかわり合いたくないという気持があるらしい」と記されています。
また、他者の存在が「私が助けなければ」という責任感を拡散するという学説は以前からあり、関連して社会的手抜き(Social Loafing)に関する研究が進められてきました。「大勢人がいると一人一人はサボりやすい」理論とでも言ったらよいでしょうか。
たとえば、イリノイ大学のリンデン(R.C.Linden)らの研究(Journal of Management 2004)によると、職場にみられる社会的手抜きが起きやすい条件として次のようなことを述べています。
(1) 共同作業の性格が濃く、個人として達成感を得にくい。
(2) 同じ仕事に携わる人の数が多い。
(3) チームとしてのまとまりが今ひとつ。
(4) 同僚の多くが大して働いていないと感じている。
(5) 他人が何とかしてくれそうに感じている。
(6) どんな仕事をしているか外部からわかりにくい。
(7) 仕事の分担が人によってアンバランス。
要するに、大勢の中に埋没して自分の貢献が見えにくいケースで社会的手抜きが生じやすいようです。それだけに、混み合う駅のホームで、見知らぬ人の危機を救ったことは、やはり、そうそう出来ないことであることがわかります。
自分に置き換えてみると、似たような場面で結局何もできないのかもしれません。ただ、生命の危機に瀕している人を見て見ぬふりをしないだけでも、心の感度を高めたいと念じています。