悩ましい脳〔なやましいのう〕(その1)

脳トレブームの現われでしょうか、書店に大脳生理学者、脳研究家、宗教家、占い師(?)などの手による本が山と積んであります。
脳ドックも普及してきています。MRIやCTで脳を輪切りにしたり血流の状態を探るなど診断技術も長足の進歩を遂げています。
ただ、今まで見えなかったものが見えるようになったことは、140億個といわれる大脳皮質の神経細胞の役割が解明できるまでの第一歩に過ぎません。たとえば、脳萎縮が認められても自覚症状がない人の今後がどうなるかは予測できないそうです。久しく研究されてきたアルツハイマー病や認知症一つとっても原因や治療法に決め手がないのだから、まだまだわからないことばかりなのでしょうね。
最近(といっても元は結構古いはずですが)の話題の一つにラテラリティ(右脳と左脳の機能を研究する分野)があります。脳の左半球が言語や論理に、右半球がイメージや直観にそれぞれ関係するといわれており、たとえば次のような利き脳の「ホントー!?」と言いたくなるような話(坂野登『ヒトはなぜ指を組むのか』青木書店、1995年)が真面目な専門書の中で論じられています。
「腕組み(注:相撲の出番を待つ力士たちがよくしているしぐさ)で右腕上の人では左前頭葉のはたらきが優位であるのにたいして、左腕上の人では逆に右前頭葉のはたらきが優位であることがわかってきた」(p.92)、「指組みで上にくる指(注:両手の指を組み合わせると一方の親指が他方の親指を押さえる形になるが、そのとき上になる方の親指)と反対側の大脳半球が優位半球であって、左指上タイプは右脳型であり右指上タイプが左脳型だということである」(p.125)。
あなたはどのタイプですか?ちなみに、我が家の4人は腕組み・指組みのパターンがそれぞれ異なります(場合の数は、「右腕上か左腕上か」の2とおり×「左指上か右指上か」の2とおりで4つだから、全パターンが揃っていることになる。)。私は腕組みも指組みも左脳型で、憧れる芸術家タイプから一番程遠いようで「ガッカリだよー!」(にしおかすみこ風)。
ここで大切なのは、腕組みや指組みの結果を幅を持って解釈することで、当然例外やタイプが時間の経過に伴って変化する人もあるし、これからの可能性を縛るものでもないことに留意すべきでしょう。左脳型だからといって、慌てて右脳を鍛える本を読む必要もないし、効果も未知数ですし。