ルノワールの絵をみてきました


  ギロッポン(六本木通のふりをしちゃいました!)の国立新美術館で開催のルノワール展を観ました。予想以上にいいラインアップで満足。『新聞を読む、クロード・モネ』、『団扇を持つ若い女』、『プージヴァルのダンス』、『水の中の裸婦』、『泉』など、美術全集その他で馴染の作品がかなり。それにしてもルノワールは日本人好みの作家なのか、日本の美術館所蔵が多いのに驚きました。
  この展覧会では、ルノワールの絵の秘密をX線や赤外線撮影で解き明かす試みが紹介されていて、「50歳前は、描き直しが目立ち、色使いも複数の絵具(緑でいえば、エメラルドグリーンとヴィリジャン)だったのが、晩年の70歳過ぎでは、描き直しがなく、使用絵具も厳選(緑ではヴィリジャンのみ)され、迷いがなくなった」とのおもしろい解説がありました。
 実は、マーは「この解説、ほんまかいな」と少し疑っています。まず、ルノワールの作品がまっすぐ一本道で進化したのかどうか。個人的には、『ムーラン・ド・ラ・ガレット』のような、深い青を基調とした、多くの人物が生き生きと描かれていた初期の作品が好きなこともあります。
 ルノワールの絵は、色使いとタッチや輪郭線に年代ごとの変化がはっきりしていて、同じ画家が描いたと思えないほどの暗い色調、輪郭線の乱れがみられた時期(スランプ)もあったとのこと。
 晩年はリウマチに悩まされ、絵を描く技法が制約された中で、「描くのが比較的楽で、かつ世間受けしやすい明るい画風」を追求した結果、使用絵具や描き直しを減らす作戦に出たのではと想像します。ヒ素が含まれだんだん市場に出回らなくなったエメラルドグリーンを使わなくなったのも意図したものというよりは自然の流れ。色調も深めの青(補色としての赤系の活用)⇒淡い緑系(補色としての淡い赤系の活用)⇒濃い黄緑系(濃いオレンジ系の活用)と変化している感じです。緑で絵全体のバランスをとるには適宜、黄色を使うのでしょうが、黄緑にしておけば、混ぜる手間が省けて絵具の種類は少なくてすみそうですし。
 ルノワールほどの巨匠なら、ここに記したことは、既に定説があって何が正解か決着がついているはずですが、日本の文献で答を読んだことはありません。
 私の仮説の正否はさておき、いろいろな想像を掻き立ててくれる美術展に出会うと幸せを感じます。昨日は、行ってみてよかった!